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最高裁判所第三小法廷 昭和33年(オ)461号 判決 1962年2月13日

主文

本件上告を棄却する。

上告費用は上告人らの負担とする。

理由

上告代理人鍛治利一名義、同吉田賢三の上告理由第一点、第二点について。

当事者が法律的用語をもつて陳述しても、それが単なる法律上の陳述であるのみならず同時に具体的な事実関係の表現として事実上の陳述たる意義をも含むものと解せられる場合には、その範囲において自白が成立することも可能であると解すべきところ、本件記録によると、上告人の代理人弁護士岸本晋亮は、所論のように原審における昭和三一年三月一二日の口頭弁論において、本件建物は昭和三〇年三月一一日の買受当時には未完成ではあつたが、法律上の建物として既に不動産化されていたものである旨陳述したことが認められ、右陳述者の職業、法律的知識程度からすれば、かかる陳述中には、少くとも本件家屋が所論のような「屋根および周壁を有し、土地に定着した一個の建造物」と認めうる状態にあつたことを前提とする事実上の陳述をも包含するものと解せられるから、この趣旨の自白の成立を認めた原審の判断は正当であり、したがつて、原審が本件家屋が上告人の買受当時建物といえる程度のものであつたか否かにつき具体的に審理判断しなかつたからと言つて、原判決には所論のような違法の点はなく、論旨はいずれも採用できない。

よつて、民訴四〇一条、九五条、九三条八九条に従い、裁判官全員の一致で、主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 五鬼上堅磐 裁判官 河村又介 裁判官 垂水克己 裁判官 石坂修一)

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